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「美しい経済の風景」をテーマにしたビジネスドキュメンタリーマガジンを刊行

“Community”と“美しい”という二つの感覚を糸口に、グローバルに展開する企業からローカルに根ざす商いまで、規模や拠点を問わず、私たちが美しいと感じる経済の営みを訪ね、対話し、その背後にある人々の哲学や態度、創意工夫や仕組みを記録しています。ビジネスが内包している「文化が経済を育て、経済が文化を育む」という側面にスポットを当て、希望の持てる経済活動の選択肢が世の中に増えることを願い、創刊しました。

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#1  美しい経済の風景の、つくり方を訪ねる

ワコール「京の温所」/楠木 章弘/ KYOTO 8

日本中、世界中から、多くの人びとが観光に訪れる街、京都。人や車がひっきりなしに行き交う大通りから路地に入ると、時が止まったかのような静けさに包まれ、昔ながらの京町家が建ち並ぶエリアに。少し傷んでいたり、人の気配が感じられなかったりする町家も多い中で、凛とした佇まいを放つ町家がある。玄関を灯す明かりに目を向けると、そこには「京の温所」という文字。ここは、創業からずっと京都を拠点に事業を行う株式会社ワコールが展開している、京町家一棟貸しの宿「京の温所」。インナーウェアを主な事業とするワコールがどうして宿を始めたのか。宿を展開するにあたって大切にしていることは何なのか。町家営業部長の楠木章弘さんにお話を訊いた…

散歩社「BONUS TRACK」/内沼 晋太郎、小野 裕之/ TOKYO 20

劇場やライブハウス、古着屋などが並び若者たちで賑わう街、下北沢。小田急線の地下化に伴う再開発で変わったのは駅前の風景だけではない。人の流れも変わっている。線路跡にできた遊歩道を進むと、公園のようでもあり商店街のようでもあるスペースが。ここは、下北沢に新しい人の流れとカルチャーを生み出しつつある「BONUS TRACK」。その仕掛け人である株式会社散歩社の代表取締役 小野裕之さんと取締役 内沼晋太郎さんを訪ねた…

シーベジタブル/友廣 裕一、蜂谷 潤/ TOKYO 33

中目黒にあるとあるテストキッチン。ステンレスの調理台の上には見慣れない色とりどりの海藻が綺麗に並ぶ。調理台を囲むのは、試食に招待されたさまざまな職業の人々。料理人は一つひとつの海藻の特徴とともに自身がチョイスした調理法の意図を伝える。次から次へと、経験のない味覚に驚きの声があがる。ここは、画期的な技術で海藻を栽培するビジネスで注目を集める合同会社シーベジタブルのテストキッチン。気候変動や水質変化の影響で海洋の環境や生態系が激変する中、まったく新しい発想で海藻の世界を切り拓く合同会社シーベジタブル共同代表、友廣裕一さんと蜂谷潤さんに話を訊いた…

リズム学園「はやきたこども園」/井内 聖/ HOKKAIDO 45

北海道の空の玄関口、新千歳空港から二〇分ほど車を走らせ、到着したのは安平町にある「はやきた子ども園」。玄関横には都会ではあまり目にしない薪が積み上げられ、園舎の中は、木の温もり溢れる空間が広がっている。
認定子ども園とは保護者の就労をとわず子どもを預けられる施設。近年、共働き世帯が増え、子どもの幼稚園の受け入れが難しくなってきている。そんな中、誰もが安心して子どもを預けられるように、教育・保育の場をつくり、守る人がいる。リズム学園、学園長の井内聖さんだ。
教育は大人から子どもに施すものではなく「子どもが子どもらしく育つ」ことが大切と語る井内さん。教育がつくる未来をどのように想像しているのだろうか…

The Cheese Board Collective / Steve Manning、津曲 陽子/ BERKELEY 55

カリフォルニア州バークレー。サンフランシスコの東、湾の対岸に位置するこの街が心地いいのは、気候のせいだけではない。あらゆる価値観にオープンなマインドが、自然と感じられるのだ。全米で最も進歩的かつ反体制的な都市として知られるバークレー。その街の名物として多くの人が挙げるのが、店内には笑顔が、店の外には行列が絶えないお店「チーズボード・コレクティブ」(以下、チーズボード)のピザだ。
チーズボードの魅力は、ピザのおいしさはもちろん、従業員たちが生き生きと働いているところにもある。実は、従業員たちは全員がチーズボードのオーナー。「Collective」と呼ばれる従業員全員が経営に決定権をもつ協同事業として経営されているのだ。その独自の経営や働き方について、メンバーたちに話を訊いた…

産直市場グリーンファーム/小林 啓治/ NAGANO 65

農協を中心とする農産物の系統出荷体制が解体しはじめ、生産者自身がそれぞれの販路で顧客を獲得する流れが加速した、一九九〇年代後半。直売所は地方における農業存続の鍵となるビジネスモデルとして大きな期待を集め、全国で開店が相次いだ。その後の盛衰は各地で明暗が分かれたが、当時から今もなお、顧客からも生産者からも絶大な支持を得る出色の存在といえば、長野県伊那市にある「産直市場グリーンファーム」だろう。「地域の声に応えながら、変わり続けてきた」という事業の歩みと背景にある想いについて、代表の小林啓治さんに話を訊いた…

Larry vs Harry / Hans Bullitt Fogh / COPENHAGEN 75

北欧の小国、デンマーク。ここに来るとまず目にする光景は、整備されたインフラを駆使して、縦横無尽に、しかも楽しそうに自転車で走り抜ける人たち。中でもひときわ目を引くのは、前に荷台のついたカーゴバイクかもしれない。前に乗せているのは、子どもだったり、大人だったり、ペットの犬だったり、買い物の荷物だったり、楽器だったり……。デンマークのカーゴバイクの歴史は古く、街ではさまざまなタイプを見かけるが、近代的カーゴバイクを作った先駆けがコペンハーゲンにある「Larry vs. Harry」というユニークな会社だ。もともとは全く違うタイプの仕事をしていたという、共同代表を務めるハンス・ブリット・フォーさんに、起業のいきさつと今、そしてこれからについて話を訊いた…

obama village /有村 健弘、有村 康弘/ KAGOSHIMA 87

鹿児島空港から車で十五分。穏やかな内海沿いのとてもゆっくりと時間が流れる小浜という地区に、ゼロから村を作ってしまったという有村健弘さんと康弘さん。江戸時代から続く林業の家系の十一代目と十一・五代目(!)というなんともユーモラスな肩書きを持つお二人にお話を伺いました…

Think the Earth /上田 壮一 / TOKYO 94

二〇一五年の国連サミットでSDGsが採択されるよりもはるか前、ソーシャルという言葉がいまのような文脈で使われることもなかった頃に生まれた社会的なプロジェクト「Think the Earth」。やがて組織となり今も挑戦を続けるその歩みは、社会的な活動を、運動から文化に塗り替えていった旅路と言えるのではないだろうか。プロジェクトの立ち上げから、数多くの取り組みを通して得た視座、そしてその先の展望まで。一般社団法人シンク・ジ・アースの上田壮一さんを訪ね、まだ見ぬゴールに向けて歩み続け、挑み続ける想いを訊いた…

香老舗 松栄堂/畑 正高/ KYOTO 106

文化は、長い年月をかけて各文化圏それぞれに独自の「美しい」を育み、その「美しい」がまた文化を育む。そして、その営みの一端を担う商いも育まれる。では、この国独自の文化の一端を担ってきた企業は、どのように経営されているのだろうか。日本独自の香文化を三百年以上ものあいだ支えてきた香老舗 松栄堂の畑正高代表取締役社長に、長野県立大学でソーシャルイノベーションを研究する大室悦賀教授とともに話を訊くことができた…

#2  美しい経済の風景の、感じ方と出会う

堂目 卓生/大阪大学大学院経済学研究科教授/ OSAKA 120

本誌の副題は、「 美しい経済の風景をめぐる旅の記録」だ。これに対し、利益を追求する経済に美しさなんてあるわけがないと一笑に付す人もいるだろう。でも、そもそも私たちは経済の何たるかをそれほど知らない。
そこで、大阪大学に経済学者の堂目卓生さんを訪ねた。一八世紀の経済学を専門に研究し、著書『アダム・スミス』で、経済学の父と呼ばれるアダム・スミスを人間観や社会観から読み解いた経済思想史家は、現在、学内に社会課題を解決するためのシンクタンクまで立ち上げて、「命を大切にする」経済を実現するために経済界にも精力的に働きかけを行っている。経済の歴史を俯瞰する、その目に映る今とこれからの経済の風景、そして経済という言葉が示すものは何か、を知りたくなったのだ。本誌編集長の桜井肖典が話を訊いた…

小野寺 愛/そっか 共同代表/ ZUSHI 131

「歪んだ世の中を良くするのは大きなお金なんじゃないか」。かつて、そう信じて外資系金融機関に就職した小野寺愛さん。一年半で退職後、国際交流 ピースボートのスタッフとして地球を九周し、さまざまな社会課題の現場を見てきた彼女の結論は、「グローバルな問題の解決策はローカルにある」こと、そして「平和は子どもから始まる」ことだった。「自分も地域で幸せをつくりたい」と、神奈川県逗子市で地域活動に取り組み始めて七年。半径二キロメートルという生活圏での営みに奔走する彼女の目に映る景色を共有してもらった…

Anker Bak /家具デザイナー/ COPENHAGEN 140

昨年九月末にデンマークのコペンハーゲンで「Renewed Dignity 尊厳を取り戻すために」という展覧会が開催された。企画したのは、自らを家具職人と呼ぶ、デザイナーのアンカー・バックさん。そこに展示されていたのは、歩行器や松葉杖、ピルケースといった、日常生活を営むことに支障のある人が使う道具で、それらはすべて木でつくられていた。
金属やプラスチックによる既存の介護用品と同じ機能を持ちながらも、全く印象が異なるそれらは、家具としてデザインされたものであり、アシストファニチャーと呼ばれる分野が、デザイナーズ家具の本場デンマークから今まさに生まれようとしている。
アンカーさんの視線の先に、これからのものづくりを考えるヒントがあるのではないかと思った。
現地で展覧会を鑑賞し感銘を受けたデンマーク在住の文化翻訳家、ニールセン北村朋子さんの計らいで、京都「TRAFFFIC」にご本人をお迎えし公開インタビューが実現した…

藤田 一照/曹洞宗僧侶/ HAYAMA 150

曹洞宗の僧侶、藤田一照さんと会うのは、これが初めてではない。会うたびにいつ
も、一照さんのもつ毎瞬世界と出会い直す態度によって、それまで知っていた言葉が未知化され、その意味が刷新される。本誌が美しい経済の風景を求めるものであるならば、美しさを感受する感性をまずは見つめたい。経済活動と距離を置く立場でありながら、一照さんであればこの美しい経済の風景を巡る旅の同伴者になってくれるのではないか。そんな期待を込めて本誌編集長の桜井が葉山の庵を訪ねた…

#3  美しい経済の風景の、つくり手と歩く

リバーバンク「GOOD NEIGHBORS JAMBOREE」/坂口 修一郎/ KAGOSHIMA 161

日本中に押し寄せる少子高齢化の波。まちづくりや廃校活用という言葉だけが一人歩きし、その町に暮らした人々の息遣いや、なぜその場を残したいのかという想いが置き去りにされるケースも少なくない。そんななか、あくまでも主語を自分に置き、心地よい仲間たちの心地よい関係性の起点として森の中の小さな学校を守り続けている坂口修一郎さんに会いに行った。「よき隣人」たちとの美しい未来をどのように作っていくのか。大切なことに気づけた旅となった…

◯と編集社「トビチ商店街」/赤羽 孝太/ NAGANO 172

レトロな看板、漬物、スナック。田舎にありがちなこの風景を「古めかしい」と捉えるか「味がある」と捉えるかは解釈次第だ。ただ、近年わざわざ地方に旅をする若者が増えている傾向をみると、こういう田舎の原風景を前向きに捉える人は増えているのだと思う。
長野県辰野町に都会から次々と人が訪れているのも、同じ理由だろう。「新しさ」だけに価値基準を置かず、衰退の風景さえも魅力の要素として捉えるおおらかさが、共感を呼び次々と人を集めているようだ。この美しいコミュニティの構想を立ち上げた一般社団法人○と編集社の赤羽孝太さんを訪ねに、辰野町へ足を運んだ…

パースペクティブ「工藝の森」/高室 幸子、堤 卓也/ KYOTO 180

京都の市街地から一時間ほど、桂川の上流へ車を走らせて辿り着いたのは茅葺の民家が残る林業のまち、京北。車を降りるやいなや、澄んだ空気が体中に沁み渡り、鳥のさえずりに心が鎮まる。古くから森林資源を供給することで都の文化を支えてきたこの土地で、循環型のものづくりをめざす動きが静かに始まっている。活動の中心に据えられたコンセプトは、「工藝の森」。「工藝の森」を運営する、一般社団法人パースペクティブの高室幸子さんと、森を歩いた…

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サイズ:A5変形
ページ:192ページ
言語:日本語
定価:2,000円+税
ISBN:978-4-911085-01-1
発行:一般社団法人リリース

Appendix

Article|ソーシャルイノベーションの研究者 大室悦賀氏の解説
Press Release|プレスリリース

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